地域をつなぐ100回連続講座 第4回報告

2021年8月22日、西東京市で小中学生対象の学習支援や居場所事業、若者の自立支援などを行うNPO法人「猫の足あと」代表の岸田久恵さんをゲストにお招きし、10年にわたり活動を続けてきた想いや、進化し続ける取り組みについてお話しいただきました。以下、岸田さんのお話を抜粋してお伝えします。

学び塾猫の足あとの活動は10年の節目を迎えました。元々、日教組で貧困問題に関わっていたのですが、児童養護施設など学校以外の人たちと交流する中で、「学校は何やってるんだ!」と言われることがありました。学校も、実践で見せていかなきゃならないんじゃないかと思うようになったんです。

そして仕事を続けながらできることを、と考え、自宅で、家族と一緒にならできるんじゃないかと考えて、家族に相談してみました。18歳の息子は、「いいよ、やるよ」と言ってくれました。大学生で塾の講師や家庭教師をやっていた娘もやる、と言ってくれました。中学校教師の夫は黙っていたのですが、何も言わないということは承認したものと勝手に判断。家族みんなの賛成を得て2011年に自宅で無料学習塾を始めることになりました。

活動の目標は都立高校に入れるようにすること。地域の中学校へチラシをもってあいさつに行ったところ、「岸田さんの娘と息子がやるんなら、いいですね。」と、かつての子どもたちの恩師が言ってくれたんです。定員5人のはずだったのですが、5人目が三つ子で最初から定員オーバー。2年目からはわざわざ募集しなくても集まるようになりました。

この活動を続けていて感じることの一つは、きょうだいが多くて家庭環境が厳しい、という例が多いこと。そして外国にルーツを持つ子どもへの学習支援が難しいということです。1期生の一人が先生役で手伝ってくれたのですが、勉強を教えるっていいな、と感じたようで、その後中学校の社会科の先生になりました。

2016年に、適切な住環境のない子どもたちの寄宿舎として「猫の足あとハウス」を開設しました。2019年には第2ハウスを始めたのですが、その大家さんは猫の足あとを応援する気持ちで、家賃を半額にしてくれ、リフォームもしてくれました。自治会長をやっている人で、地域に若い人が住むのは嬉しい、と言ってくれています。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、学校が休校となる中、私たちは猫の足あとに通っている子どもたちに課題を出したり、弁当を配布したりしました。やはり人が集まることは避ける必要があり、小学生は来なくなり、今は多くて常連の子たち5-6人が通ってきています。

参加者とのやりとりをいくつかご紹介します。

質問:子どもの貧困を感じるようになったのはいつ頃ですか。

岸田:38年間教師として子どもたちを見てきましたが、貧困は昔からありました。教師として無力感を感じたこともあります。実際に、虐待や夜逃げ、集金袋をもってこられない子ども、兄弟で体操着を共有している子どもたちもいました。政府がようやく子どもの貧困の存在を認めたのは2009年に初めて貧困率を発表してからです。

質問:10年間続けてこられた秘訣は何でしょうか。

岸田:同じことをやっていないから続けられた、というのはあると思います。好きなこと、思いついたことをやっていい場所なんですね。

地域をつなぐオフィス

すべての人々が安全・安心に暮らすことができるまちづくり、子どもを真ん中に置いた地域づくりに貢献することを目的とし、地域の課題解決のために活動する人や組織をつなぎ、地域のネットワークを広げる様々な取り組みを行っています。