地域をつなぐ100回連続講座 第3回報告

地域の人々に親しまれながらも2021年6月いっぱいで閉店することを決意した、西東京市・谷戸商店街の三又酒店店主、山崎明さん。消防団員として32年間地域の防災に尽力し、最近では西東京市地域協力ネットワークの西部地区(にしにしネット)の代表も務めています。2021年6月20日、その山崎さんを講師に迎え、閉店に至る経緯や地域活動への想いについて熱く語っていただきました。

いろんな人がいて、いい地域ができる

昭和40年に谷戸で生まれ、高校まで野球漬けの青春を送った山崎さんは、「もし酒屋を継ぐ気があるなら、外の飯を食ってこい」という父の言葉を受け、大手化繊企業に約2年間勤めた後、三又酒店に入りました。

地域の人々とのつながりを大切にし、様々な地域活動に携わる山崎さんにそのきっかけを伺うと、「父の影響ですね。救急車が来ると走っていく。消防車が走ると現場を確かめに行く。そしてお客さんとのつながりをとても大切にする人でした」「一人だけではなにもできない。いろんな人がいることでいい地域ができる、と思うんです」「みんなとコミュニケーションをとることでみんなからパワーをもらっています。それを少しお分けしてるのかな。自分は寂しがりや。一人でポツンといるのが嫌なんですよ。みんなにも是非外を見てほしいと思います」と、思いを語ってくれました。

新型コロナで需要がゼロに

次に、三又酒店を閉めることになった経緯について伺いました。

「サザエさんの三河屋のサブちゃんみたいに、たくさんのお客さんにご愛顧いただいてきましたが、新型コロナの影響で、会食関係の需要が実質ゼロになり、会社経営としては成り立たなくなった。それで閉店を決意しました」「ウォークインの冷蔵設備を整えて、リース契約を一昨年更新したばかりだったんです。ウーロン茶の消費期限を冷蔵庫の中で迎えてしまった。そんな状況が改善する見込みもありません。私も55歳を迎え、これからどうするかを考えました。そして、酒屋は閉店し、第2ステージへの挑戦を決意したんです。」

大規模店舗の出店が転換期

参加者の一人から、「小学校のころは個人商店がたくさんありました。いつ頃から変化してきたのでしょうか」という質問がありました。

「ひばりヶ丘駅前に西友ができたのが転換期です。西友の1号店が市内にできた頃は、地域の商店と共存していたのですが、駅前に大規模店舗ができてから状況は大きく変わりました。地域のおばちゃんは『デパートができた』といって喜んでましたからね。大型店が力業で売り上げを上げようとすれば、そりゃあ地域の店舗は耐えられませんよ。その後、さらにPARCOができて、個人商店が立ち向かえない状況になっていきました」「商店街にはあじのあるお店がたくさんあるんですよ。せんべいや、大福やなどがあり、名物おやじがいっぱいいたけれど、みんななくなってしまいました。」

地元に恩返しができる仕事を

最後にこれからのお話をしていただきました。

「店を閉める決断をして次のステップへ進むにあたり2点思うことがありました。ひとつめは地元で働きたいということ。ふたつめは、地元に恩返しができる仕事をしたい、ということです。生まれ、育ててもらったこの地域に恩返しがしたい。フェイスブックで『閉店し、就活します』と書いたら、『うちに来ないか』という声をたくさんかけてもらい、びっくりしました。最終的には三幸自動車でタクシーの運転手として仕事をすることになりました。町田社長が、『介護タクシーや、料理を運ぶサービス、オーダーメイドのツアータクシーなどやりたいことがいっぱいある。そこを一緒にやらないか』と声をかけてくれたんです。少しでも地域の人々の足になり、楽しい時間を過ごしてもらいたいと思い、町田さんのところにお世話になることにしました。」

店舗の復活はあり得るのか、という質問に「ありません。それなりの覚悟をもって閉めるので、それはない。でも、谷戸商店会はやめません。そしてにしにしネットも離れません。」と力強く答えてくれました。

地域をつなぐオフィス

すべての人々が安全・安心に暮らすことができるまちづくり、子どもを真ん中に置いた地域づくりに貢献することを目的とし、地域の課題解決のために活動する人や組織をつなぎ、地域のネットワークを広げる様々な取り組みを行っています。