「地域をつなぐ100回連続講座」第2回報告

 2021年5月9日、「地域をつなぐソーシャルビジネス報告会」と題し、株式会社御用聞きの代表、古市盛久さんをお迎えしてお話を伺いました。

 昨年、西東京市が新型コロナウイルス感染拡大の状況下、75歳以上の世帯を対象に行ったフレイル(精神・身体的な虚弱状態)予防事業「西東京おうち時間応援パック」を受託し、約1カ月間にわたり、120人のスタッフ・有償ボランティアを集めて約2万7千世帯への配送作業を行った古市さん。

 10日間で7つのアイテムが入ったセットを2万7千つくる作業を進めるためにPDCAサイクルをまわし続け、少しずつ作業がスムーズに進むようになった過程や、ボランティアの中で高圧的な態度でチームワークを乱そうとするおじさんととことん話し合い、最終的には彼の態度が激変し、チームのムードメーカーになっていったエピソードなどを面白く語ってくれました。

 実際の配達では、配達先を案内するスマートフォン用の地図アプリを導入したものの、使い勝手が悪く、結局はゼンリンの住宅地図に勝るものはないという結論に達したそうです。

 この活動に参加したボランティアからは、「困っているお年寄りを元気にするためのこうした活動がもっと増えるとよい」「疲れたけれど、自粛続きで動かせなった体を動かすことができてよかった」といった感想がきかれたとのこと。

 そして、このパックを受け取った方々からは、活動が終わってしばらくたっても市役所やボランティアに対して「ありがとう」という感謝の声が届くそうです。古市さんもこの取り組みに関われたことに誇りを感じているとのことでした。


 古市さんが代表を務める株式会社御用聞きは、公的な資金に頼らない地域福祉サービスとして「100円家事代行」などの事業を展開しており、講演の後半では、事業の内容やコンセプトについて詳しく話してくれました。行政や大学との連携にも力を入れていて、事業の担い手として登録している学生は200名以上にも上ります。今回の報告会にも都内の大学からインターンとして参加している学生数名の姿がありました。

 最後に「第5のインフラを日本でつくる」という団体のミッションを紹介してくれました。電気、ガス、水道に続く第4のインフラが通信、そして安全・安価なサービスを第5のインフラと考え、日本全国の8割の地域で流通させる、という目標を立てています。


質疑応答の時間には、たくさんの質問をいただきました。

Q:御用聞きの活動では、高齢者からどのようなニーズが多く寄せられますか。

A:キーワードは3つあります。まず高いところ。高いところに手が届かない、危ない、ということで高所作業をお願いされます。それから腰痛。重たいものが持てない、かがんだ作業ができない、といった相談。3つ目は「私はまだ元気」という言葉。元気なんだけど、○○なのでお願いするのよ、という方がとても多いです。あと、最近はスマートフォンに関する相談も増えてますね。

Q:ビジネスとして成り立っているのでしょうか。またビジョンに向けた課題は何ですか。

A:私が嫌いなのは二流の経営です。三流の経営は論外。三流の経営は、誰かからお金をだまし取ること。二流の経営はゼロサムゲームの勝者になること。私が目指す一流の経営は、ゼロからイチを生み出し、そこに経済的な利益が伴う経営です。ビジネスとして、想定通りには伸びていないのが現状ですが、想定以上の需要を感じています。ちょっと困ったときにそばにいる。そんな存在になりたいと考えています。ビジョンの達成に向けて必要だと考えているのは、互助の文化を創造すること。助け合い、お互いさまの関係が、コンビニと同じように当たり前の世の中にしていかなければならないと思っています。


 話のポイントをキャッチーな言葉で表現する古市さんのお話は飽きることがなく、あっという間の1時間で、まるで無料でビジネス・コンサルタントの研修を受けているような、お得感満載の報告会でした。そして何よりも、ビジネスを通じてみんなが安心・安全に暮らせる社会を実現したいという熱い想いをみんなが受け取った、貴重な時間となりました。

株式会社御用聞き

https://www.goyo-kiki.com/

地域をつなぐオフィス

すべての人々が安全・安心に暮らすことができるまちづくり、子どもを真ん中に置いた地域づくりに貢献することを目的とし、地域の課題解決のために活動する人や組織をつなぎ、地域のネットワークを広げる様々な取り組みを行っています。